日ごろなんとなく気になってること
はじめて読んだ村田沙耶香氏の小説は『信仰』だった。日ごろから熱狂的に信じるってコワいなあと思っていたのを見透かされたような物語だった。『消滅世界』もまた、何となくこれまで信じてた家族とか結婚が成立しなくなってくるような予感や不安を先取りされたような物語なのにびっくりした。そんなふうに日ごろから何となくコワかったり不穏に思っていることは、日常の生活に紛れて考えないようになっていって、いつの間にか忘れていたら、ふと気づくと、「そんなふうになったらどうなっちゃうんだろう?」と心配してた世界があたりまえの現実になってしまってはいないか。
村田沙耶香氏の小説は海外でも人気だという。小説は時代を先取りしていることが少なくない。誇張して極端にして面白くした絵空事だと言い切れないからコワい。ただただこんな世界は嫌だというのではなく、セックスも家族もない清潔? な世界が不自然であっても、まんざらでもないと思ってしまう自分もいる。
読んだことがないのだけれど、SFの名作『幼年期の終わり』を思い出した。津村記久子氏の『やりなおし世界文学』によると、宇宙からやって来たオーヴァーロードによって、人類は争わない平和な世界を実現し、退屈な子供たちは、やがて身体的には別でも意識の底で一つの統合体になって億単位で集合するようになるという。
生き物である限り、性と暴力は避けられない。平和になったらなったで飽きて嫌になってあげく疲れてくるというのだから始末が悪い。宇宙人に来てもらわなくとも、あっちこっちそこそこ平和にできないものか。


