「魍魎の匣」を思わせる不気味さ
どういうわけか京極夏彦の「魍魎の匣」を思い出した。といっても「魍魎の匣」は一回読んだだけで正直よく覚えていない。ただ薄気味悪い宗教団体と骨ではなかったかもしれないけれど死体の一部が出てくる。ただ何となく気持ち悪い雰囲気が一瞬似てると思ったようだ。
話は「魍魎の匣」ほど複雑でなく、読み進めて行くと、不気味というほどでもない。途中、すべて主人公七瀬悠(はるか)の妄想を疑う流れに、まさか「アクロイド殺し」のような叙述トリックだったりしたらちょっと残念だなあと心配したが、そんなことはなく、すべてすっきりきれいに解決。読後感はよかった。
何と言っても殺人鬼である牛尾のキャラクターが強烈。残忍なシーンの描写はほとんどなく、ただ想像させるだけにしているところがうまいなあと思う。
悠(はるか)と紫陽(しはる)のはかなくも哀しい恋の物語だったような気もする。生まれてしまったクローンに生きる道はあるのか。重い課題は残されたまま・・・・・・。
